50年を越えて受け継がれるデザイン:7’2” SEMI-GUN

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Oct 1, 2026

サーフボードには、数字だけでは表すことのできないものがあります。

長さ、幅、厚さ。
ロッカー(ボード全体の反り)、レール(ボード側面の形状)、テール。
それらを測り、同じ寸法を再現することはできます。

しかし、そのボードがどのように波を走り、どのようにサーファーを導くのか。そして、そこで得た経験が、次の一本へ、次の世代へ、どのように受け継がれていくのか。

それは、数字だけでは語ることができません。

2025年11月、T-REEF Shape Workshopで信之助がシェイプした7’2” Semi-Gun(セミガン)。

その原点にあるのは、50年以上前の1972年、私の師であるDick Brewer(ディック・ブルーワー)先生に初めてシェイプしていただいた7’2” Semi-Gunです。

一本のサーフボードから始まり、半世紀を越えて受け継がれてきたデザインの話です。

1972 — 私の原点となった7’2” Semi-Gun

1972年、私はハワイへ行きました。
Makaha(マカハ)や North Shore(ノースショア)で本場のサーフィンを経験し、そこで出会ったのがDick Brewer先生でした。

そして、Brewer先生に初めてシェイプしていただいたのが、7’2”のSemi-Gunでした。

Original 7’2” Semi-Gun

7’2” × 18 1/2” × 3 1/8”
Nose / 12 1/2”
Tail / 11”
Baby Diamond Tail(小さなダイヤモンドテール)
Down Rail(エッジを低く落としたレール)
Classic Foil(クラシックな厚みの配分)
Single Fin(シングルフィン)

ボトム形状は、
Soft V → Flat → Slide V
という流れ。

ロッカーは緩やかなカーブを描き、厚みはEagle Nose(イーグルノーズ)からセンターにかけてしっかりと残しながら、テールへ向かって徐々に薄くなっていきます。

当時のSemi-Gunらしい、クラシックなフォイル(ボード全体の厚みの配分)です。

ただ厚みのあるボードを作っているわけではありません。

パドルやテイクオフに必要な浮力は残す。一方で、波の中でコントロールするために、必要のないボリュームはテールへ向かって落としていく。

一つひとつのラインに役割があります。

しかし、当時の私がこのボードの本当の意味を理解したのは、
実際に、このボードで波に乗ったときでした。

「サーフボードが自分を導いている」

1973年、私はこの7’2”で稲村ヶ崎の大きな波に入りました。

テイクオフした瞬間、ボードはとてもスムーズに、そして自然に加速して、私を波のボトムまで運んでくれました。

そこからボトムターンへ。

その瞬間、まるでボードが、私の行きたい方向をすでに知っているような感覚がありました。

無理にボードを動かしている感じがない。

波の力とボードの動きが自然につながり、そのまま私をチューブへと導いてくれました。

チューブの中には、それまで知らなかった世界がありました。

音がない。
風もない。

まるで暖かい空気に包まれているようなのに、自分はそれまで経験したことのないスピードで進んでいる。

ものすごいアドレナリンでした。

そして、その瞬間に気づいたのです。

「自分がサーフボードをコントロールしているのではない。
サーフボードが自分を導いている。」

それまで乗っていたボードだったら、あのコンディションではテイクオフすることさえ難しかったと思います。

一本のサーフボードの性能によって、サーフィンそのものの体験が、ここまで変わる。

それを初めて身体で理解した瞬間でした。

振り返ってみれば、この経験が私をサーフボードデザインの世界へ導いてくれたのだと思います。

そして、本格的にシェイパーを目指す旅の始まりにもなりました。

あの7’2”は、50年以上が経った今も、私の手元に残っています。

2025 — 信之助とのShape Workshop

それから50年以上が経った、2025年11月。

信之助が初めてT-REEF Shape Workshopを受講しました。

彼は以前からサーフボードのシェイプに強い興味を持っていました。

私がShape Workshopで大切にしているのは、フォームを削り、一本のサーフボードを完成させることだけではありません。

なぜ、そこを削るのか。
なぜ、そのラインにするのか。
その形が、水の中でどのように働くのか。

そこまで考え、理解しながら、自分の手で形にしていくことです。
そんな信之助から、一つのリクエストがありました。

私が今も所有している1972年のDick Brewer 7’2” Semi-Gunを見て、

「このボードと同じシェイプデザインで作りたい」

と言ったのです。

私はそのリクエストを受けました。

50年以上前のデザインを、もう一度フォームの上へ

信之助がシェイプする7’2”は、1972年のオリジナルをデザインの基準にしました。

Shinnosuke’s 7’2” Semi-Gun

7’2” × 18 1/2” × 3 1/8”
Nose / 12 1/2”
Tail / 11”
Baby Diamond Tail(小さなダイヤモンドテール)
Down Rail(エッジを低く落としたレール)
Classic Foil(クラシックな厚みの配分)
Single Fin(シングルフィン)

ボトムも、
Soft V → Flat → Slide V
というオリジナルの流れを踏襲しています。

Eagle Noseからセンターにかけて厚みを残し、そこからテールへ向けて徐々にフォイルを薄くしていく。

けれど、ここで大切なのは、1972年のボードと同じ寸法に合わせることではありません。

私は信之助に、その数字の裏側にある理由を理解してほしいと思いました。

Shape is not just a shape.

サーフボードをシェイプするとき、私は「形」だけを見ているわけではありません。

フォームの上に引かれる一本一本のラインには、水の中での役割があります。

ノーズから入った水が、どのようにボードの下を流れ、どこで方向を変え、どこから抜けていくのか。

レールが、どのように波のフェイスを捉えるのか。

テールに向かって変化するフォイルが、ターンの中でどのようにボードをコントロールするのか。

ロッカーが、テイクオフからボトムターンまで、どのようなラインを作るのか。

どこか一つだけでサーフボードの性能が決まるわけではありません。

すべてがつながっています。

1972年、Brewer先生の7’2”から私が学んだのも、まさにそのことでした。

そして50年以上が経った今度は、それを私自身の経験として信之助に伝える。

それが、今回のShape Workshopでした。

コピーではなく、デザインを受け継ぐ

「同じボードを作る」ということは、単純に昔のボードをコピーすることではありません。

本当に受け継ぎたいのは、フォームの形そのものではなく、

なぜ、その形になっているのか。

というデザインの考え方です。

1972年、Dick Brewer先生が私に作ってくれた7’2”。
そのボードに乗ったことで、私はサーフボードの可能性を身体で知りました。

そして50年以上後、その一本を前にして、今度は信之助と一緒に、そのデザインをもう一度フォームの上から読み解いていく。

Brewer先生から私へ。
私から信之助へ。

同じ寸法を再現すること以上に大切なのは、その形が生まれた理由を次の世代が理解することだと思っています。

だから、この7’2”には三つの時間があります。

1972 — Dick Brewer
2025 — Tadao & Shinnosuke
そして、これから。

一人のシェイパーから、次の世代へ。

The Journey Continues

私にとってサーフボードシェイプとは、「完成した形」を作ることではありません。

波と、サーファーと、サーフボード。
その関係を探し続けることです。

1972年、Brewer先生の7’2”に乗ったとき、私は初めて、

「ボードが自分を導いてくれる」

という感覚を知りました。

その感覚は、50年以上が経った今も、私のシェイプの中に生きています。

そして2025年、その原点となったデザインを、信之助が自分の手でフォームから削り出しました。

一本のボードから始まった経験が、次のサーファーへ。
そして、次のシェイパーへ。

The shape continues.
The knowledge continues.
The journey continues.